2. 年上の彼女(八田side)

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「エリカさん…あのさ」  キャンドルの灯りだけのバスルーム。エリカさんの好みの、泡だらけの風呂はいい香りがする…なんだっけ?この香り。  華奢な肩にそっと触れながら、アップされた髪であらわになったうなじに吸い付く。 「ん…何?」  気持ちよさそうに目を閉じている彼女の耳元で、囁く。 「来週なんだけど、来るの遅くなってもいい?」 「いいけど、何時くらい?」 「夜中過ぎちゃうかも。昔お世話になった人に飲みに誘われてさ」 「いいよ、鍵開けとくから」 「え、それはダメでしょ?」  エリカさんの無防備な一言に、思わず返事に険が入る。 「だってうちに来れるの夜中でしょ?八田くん、うちの鍵持ってないし…その時間、私寝ちゃってるかも」 「いや、それならオレ、金曜は自分の家に帰って土曜の朝に来るよ」 「それはダメ」 「ダメったって、鍵掛けないで寝るとかないでしょ?」 「電話してよ」 「寝てるなら起こしたくないしさ」 「えー…」 「来て欲しいんなら鍵、ちょうだい?」  オレの言葉に、エリカさんが固まった。そのときに軽くガッカリした…ああ、まだ、そこまで気持ちができてないのか?  週末家に泊まるようになっても、まだ鍵を渡す仲じゃない、ってことなのか…。 「昔お世話になった人って誰?」 「友達の大学の先輩。正式には、友達の兄貴の先輩」 「ふうん…男?」 「気になる?」 「別に」 「気になってんだろ?妬いてる?」 「気にしてないし妬いてないし」  後ろから見るエリカさんの頬は、ほんの少しだけいつもよりも膨らんでる気がした。  ほんっと、可愛いんだよなぁ…こうやって子どもみたいに無防備に感情を出されると、もう…好きが過ぎてどうしようもなく、地団駄を踏みたくなる。   脇の下から手を差し入れ、泡を手に取りながら柔らかな膨らみを包む。 「やだ、ちょっと」 「妬いてんでしょ?素直に言って」 「だから、妬いてないってば」 「じゃあ、カラダに聞いてみるか」 「何それ、ベタ過ぎる」  少し機嫌を直してか、ふふっと笑う声。  腕に少し力を込めて彼女を抱きしめ、後ろから耳、うなじ、首筋、肩…と吸っていく。 「ん…」  我慢できずに漏れる声がセクシーだ。 「気持ちいい?」 「ん…ん、ん…」 「いつまで我慢できるかな?」 「…意地悪…」 「正直に妬いてるって言えばご褒美あげる。言わなければお仕置き」 「ぷっ…」 「なんだよ?」 「だって結局えっちなことする気満々なんだもん!」 「そりゃそうだろ?一緒に風呂入ってんだし。オレそろそろ我慢できないよ?」  エリカさんの手を掴んで股間に触れさせた。 「ほら…もうこんなんだよ?」 「…こんなん?」  さすられて息が少し荒くなる。 「やめてよ、ここでしたくなるから」 「あ、それはいや」  エリカさんはさっとバスタブから立ち上がると勢いよくシャワーを出し、泡を洗い流した。 「え?え!?もう出るの?」  慌ててバスタブから立ち上がる。この泡泡、どうすんだよ。  エリカさんが振り返る。悪戯っ子のような目がキラリ、と光った。  バスルームのドアを開け、タオルを掴むと素早く体に巻きつけた。 「八田くんと早く愛し合いたいからベッド、行ってるね?」  捉まえようと伸ばした腕はうまくすり抜けられた。 「ちょっと!」  タオルを引っ掴んで出ようとすると泡に足を取られてすっ転んだ。 「くっそぅ!」  腹立ち紛れにシャワーを最強にして泡を流す。  だいたい流れたところでタオルで乱暴に拭き取り、ベッドルームに行く。 「エリカさん…オレで遊んでるでしょ?」  ベッドの中、おそらく素っ裸で布団にくるまっている彼女がオレを見て微笑む。なんでそんなに嬉しそうなんだ? 「そんなことないよ、ちゃんと真面目だもの」 「そういう態度がまた腹立つんだよな」 「じゃあ…今日はしない?」  返事のかわりに唇を重ねた。下唇を甘噛みし、彼女の欲に火を付ける。もたれ合うように押し倒し、求め合う…何度も、何度も。  体中が心地よい倦怠感と充足感に満たされ、眠りについたのはほぼ、明け方だった。
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