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「エリカさん…あのさ」
キャンドルの灯りだけのバスルーム。エリカさんの好みの、泡だらけの風呂はいい香りがする…なんだっけ?この香り。
華奢な肩にそっと触れながら、アップされた髪であらわになったうなじに吸い付く。
「ん…何?」
気持ちよさそうに目を閉じている彼女の耳元で、囁く。
「来週なんだけど、来るの遅くなってもいい?」
「いいけど、何時くらい?」
「夜中過ぎちゃうかも。昔お世話になった人に飲みに誘われてさ」
「いいよ、鍵開けとくから」
「え、それはダメでしょ?」
エリカさんの無防備な一言に、思わず返事に険が入る。
「だってうちに来れるの夜中でしょ?八田くん、うちの鍵持ってないし…その時間、私寝ちゃってるかも」
「いや、それならオレ、金曜は自分の家に帰って土曜の朝に来るよ」
「それはダメ」
「ダメったって、鍵掛けないで寝るとかないでしょ?」
「電話してよ」
「寝てるなら起こしたくないしさ」
「えー…」
「来て欲しいんなら鍵、ちょうだい?」
オレの言葉に、エリカさんが固まった。そのときに軽くガッカリした…ああ、まだ、そこまで気持ちができてないのか?
週末家に泊まるようになっても、まだ鍵を渡す仲じゃない、ってことなのか…。
「昔お世話になった人って誰?」
「友達の大学の先輩。正式には、友達の兄貴の先輩」
「ふうん…男?」
「気になる?」
「別に」
「気になってんだろ?妬いてる?」
「気にしてないし妬いてないし」
後ろから見るエリカさんの頬は、ほんの少しだけいつもよりも膨らんでる気がした。
ほんっと、可愛いんだよなぁ…こうやって子どもみたいに無防備に感情を出されると、もう…好きが過ぎてどうしようもなく、地団駄を踏みたくなる。
脇の下から手を差し入れ、泡を手に取りながら柔らかな膨らみを包む。
「やだ、ちょっと」
「妬いてんでしょ?素直に言って」
「だから、妬いてないってば」
「じゃあ、カラダに聞いてみるか」
「何それ、ベタ過ぎる」
少し機嫌を直してか、ふふっと笑う声。
腕に少し力を込めて彼女を抱きしめ、後ろから耳、うなじ、首筋、肩…と吸っていく。
「ん…」
我慢できずに漏れる声がセクシーだ。
「気持ちいい?」
「ん…ん、ん…」
「いつまで我慢できるかな?」
「…意地悪…」
「正直に妬いてるって言えばご褒美あげる。言わなければお仕置き」
「ぷっ…」
「なんだよ?」
「だって結局えっちなことする気満々なんだもん!」
「そりゃそうだろ?一緒に風呂入ってんだし。オレそろそろ我慢できないよ?」
エリカさんの手を掴んで股間に触れさせた。
「ほら…もうこんなんだよ?」
「…こんなん?」
さすられて息が少し荒くなる。
「やめてよ、ここでしたくなるから」
「あ、それはいや」
エリカさんはさっとバスタブから立ち上がると勢いよくシャワーを出し、泡を洗い流した。
「え?え!?もう出るの?」
慌ててバスタブから立ち上がる。この泡泡、どうすんだよ。
エリカさんが振り返る。悪戯っ子のような目がキラリ、と光った。
バスルームのドアを開け、タオルを掴むと素早く体に巻きつけた。
「八田くんと早く愛し合いたいからベッド、行ってるね?」
捉まえようと伸ばした腕はうまくすり抜けられた。
「ちょっと!」
タオルを引っ掴んで出ようとすると泡に足を取られてすっ転んだ。
「くっそぅ!」
腹立ち紛れにシャワーを最強にして泡を流す。
だいたい流れたところでタオルで乱暴に拭き取り、ベッドルームに行く。
「エリカさん…オレで遊んでるでしょ?」
ベッドの中、おそらく素っ裸で布団にくるまっている彼女がオレを見て微笑む。なんでそんなに嬉しそうなんだ?
「そんなことないよ、ちゃんと真面目だもの」
「そういう態度がまた腹立つんだよな」
「じゃあ…今日はしない?」
返事のかわりに唇を重ねた。下唇を甘噛みし、彼女の欲に火を付ける。もたれ合うように押し倒し、求め合う…何度も、何度も。
体中が心地よい倦怠感と充足感に満たされ、眠りについたのはほぼ、明け方だった。
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