4. どうして?なんで?

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4. どうして?なんで?

 守岡くんに告白されて、返事ができなかった。  彼氏がいる、って言っても諦めない、彼…。  もっと突っぱねなきゃ、冷たくしなきゃ。そう思っているのに…彼の愚直さに、負けてしまいそう。 「僕、そんなに女性とつき合ったことないから、惚れさせるっていってもどうしたらいいかわかんないすけど…でも、契約切れるまでの後2ヶ月、努力したいんです」 「エリカさんのこともっと知りたいし、僕のことも知って欲しいです」 「会社の帰りにちょっと会って話したりとか、LINEしたりとか…そういうの、させてほしいです。僕のこと好きにならなくていいから…好きでいさせてください」  傷つくことを厭わずに進むタイプ。強気なくせに気持ちは押し付けない。  こっちに最終判断を任せる余裕ももたせてくれる。勢いだけじゃない…若さだけじゃ、ない。こんな、素直で良い子…もしも彼が別の人を好きだったら、恋愛相談に乗ったり、応援してあげられたのに。 「連絡先、交換してもらえませんか?」 「…私からは連絡しないよ?」 「それでいいです。教えてください」  電話番号をメモして、渡した。 「LINEもいいですか?」と言われ、QRコードを出した時に、八田くんからメッセージが入った。  開けてみると、にこにこ満面笑顔の八田くんの自撮り写真だった。可愛い笑顔に守岡くんの存在を一瞬忘れた。  どこか、居酒屋のカウンターなのか、後ろにお客さんたちらしい人たちが映ってる…安心した。 「彼氏さんですか?」 「あ、うん。ちょっと返事するね?」  綻んだ顔のまま、画面をフリップしようとしたらすぐにまたメッセージが入ってきた。 「一緒に飲んでる先輩!」のコメントと共に、送られてきた画像。  何、これ…何かの間違いじゃないかと目を疑い、何度も確認する。  八田くんと肩を組んで、楽しそうに笑っている男性。彫りの深い顔立ち…日本人離れしたその顔は、外国の血が入ってる、と言われたらそのまま信じてしまいそうだった。  すっと伸びた綺麗な鼻筋に、窪んだ眼窩。笑うと八の字になる眉毛は、あの頃のまま。  ううん、彼のわけがない。きっと他人の空似…そう思いたいのに、こんなに特徴的な顔の人が他にもいる訳がない、とも思ってしまう。  ぎゅっと、胸が苦しくなる。切なくて苦しくて…絶望の中、毎日泣くことしかできなかったあの頃が蘇る。 「エリカさん?どうしました?」  守岡くんが心配げに聞いてくれるけれども、顔が上げられない…目が、画像に釘付けだ。  八田くんと一緒に映っていたのは、私の元夫。  数年前に行方知らずになったまま、離婚届を送りつけてきた…寺田健一郎だった。
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