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2. 年上の彼女(八田side)
金曜の夜から週明けの月曜朝まで、エリカさんちで過ごすようになって、やっと1ヶ月ちょっと。
5歳年上、ってことで最初は手探りだった付き合いも、今は少しこなれてきた気がする。
ある程度大人になってからの付き合いは、色んな意味でスムーズだ。
とは言ってもエリカさんは案外奥手というか、きっちりしているというか。
付き合う、と決めてから深い仲になるまで、思ったよりも時間がかかった。
けど、そんなところも好きだな、と思ってる。
大人だから省略できることも、これまでの経験値で、暗黙で理解しあえることもある。
けど、2人の関係を一歩一歩着実に固めたいんだろうな、という気がして、その堅実さを嬉しい、と感じていた。
エリカさんを前にすると、オレの理性はどっかに行ってしまう。
年上なのに可愛くて生意気で、セクシーで…めちゃくちゃ征服したくなる。
誘っておいてかわすのがうまい。いや、誘ってるのもかわしてるのも、あれ、天然なんだよな?おかげで最初の頃はよく肩透かしを食らった。
今はまだ、オレの方が惚れてると思う…けど。
いつか絶対「好きすぎて無理」って言わせたいし、あっちの方でもエリカさんを満足させたい。
彼女は優しいからいつも「すごく良かった」って言ってくれる。
けど、それに甘えちゃいけない…。悔しいけど多分、100パーは満足してない、と思う。
一晩に何度しても、エリカさんは翌朝、必ずオレより早く起きる。
エリカさんの可愛い寝顔を見たいのに、いつもオレは爆睡で…オレの方が寝顔を堪能されてる。
だから、この週末は絶対にエリカさんを寝かしてやらない。一晩中愛し抜いてやる、と心の中で気合を入れまくる。
「…さん、八田さん!」
呼ばれてふと我に帰る…やべ、仕事中なの忘れてた。
「何?」
「二番に外線ですよ!」
「ありがとう」
仕事中だろ?しゃんとしろ。自分を叱責する。
エリカさんは仕事を疎かにする奴、絶対嫌いそうだよな、と思いながら電話に出る。
「お待たせしました、八田です」
「よぉ、久しぶりだな。元気か?」
「寺田さんですか?お久しぶりです!今どこですか?」
「さっき羽田着いたばっかりなんだ。久しぶりに長い休暇取れて、戻ってきた。急だけど今日の夜空いてたら飲みに行かないか?」
「今日はちょっと…来週だったら調整できるんですが。来週末は日本にいますか?」
「いるよ。じゃあ来週にしよう。話したいことがあるから」
「いいですよ、上海の話、聞かせてくださいよ」
「お、興味ある感じ?お前の近況も聞かせろよ?場所と時間は改めて連絡するから」
「了解です!楽しみにしてます!」
「ああ、じゃあな」
電話の主は、就活のときにお世話になった、友達の大学のOB、寺田さんだった。
10歳離れてるけどかなり気が合って、就職後もちょくちょく飲みに行き、近況報告をしていた。
オレのことを、まるで弟のように可愛がってくれて、面倒を見てくれた…恩のある人だ。
ここ数年、寺田さんは上海に拠点を移していたから日本にいなかった。
相当忙しいらしいと噂で聞いた。それが原因で離婚した、ということも。
今は落ち着いたのだろうか。休暇…結構長く取れたのかな?
寺田さんはいつも刺激をくれる。ワクワクするような話をしてくれて、オレのやる気を後押ししてくれる。
ここ数年会えていなかった分、彼が上海でどんな仕事をしているのか、聞くのが楽しみになった。
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