持ち帰れよ~!

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 宇宙人たちは宇宙服姿で作業を行う。  俺と従兄はその近くで畑を耕やし種を蒔き、草むしりをして肥料を置き水を撒く。  見た目だけでも俺たちと住む世界がまったく違うと判る。息をして生きていくための大気構造が、俺たちの星とからきし違うのだ。  全身を覆う動きづらそうな分厚い服。その上に丸く大きなガラス瓶のようなものを被っている。数人で一人分の働きしかできない宇宙人たちの作業は、遅々として進まない。  宇宙人たちは俺たちが掘り起こした土を保存容器に入れて、畑の脇に生えていた草をむしり取り、数種類の木の枝と芽を採取した。  俺が高い場所で熟している赤い実をもいで渡してやると、お礼をするように頭を下げた。 「ゴ協力、感謝スル」  容器と道具を宇宙船に片付けて、再び頭を下げた。律儀な宇宙人だ。 「帰るのか」 「幾星霜カケテコンナ遠方ニタドリ着イタ。早ク故郷ニ帰リタイ。モシカシタラ、マタ同胞ガココニ来ルダロウ。ソノトキモ排除スルコトナク、協力ヲ願ウ」 「ここはすごく遠いんだな」  危険を冒してまでここに来た。ほんのひととき触れ合っただけの異邦人に慈愛の目を向ける。
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