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全く以て可愛い。
僕はすっかり聡美ちゃんに癒されながら兎達を暫く見てから一羽の兎を指さして言った。
「聡美ちゃん、あのうさちゃんは何でもぐもぐしてるんだろうね?」
「食いしん坊の大関だから!」
「ハッハッハ!」と僕は思わず笑った。ほんとにこれ位の年頃の子は面白いし、微笑ましい。
僕は面白がってまた持ち掛けた。
「聡美ちゃん、あのうさちゃん、見てみな。ちょっとおデブなうさちゃんのお尻の穴をクンクンしてるよ。」
「ふふふ、ほんとだ、くちゃいのに・・・」
「違う違う、うさちゃんはねえ、好い匂い好い匂いってクンクンしてるんだよ。」
「へえー、好い匂い好い匂いってクンクンしてるの。」
「そうだよ、仲良しで良いだろ。」
「うん!」
「でもさあ、あそこの隅っこに居る細っちょのうさちゃんは独りぼっちで、ちょっと寂しそうだね。」
「うん、可哀想。」
「可哀想と思った?」
「うん。」
「優しいねえ、聡美ちゃんは。いつまでも、その心を忘れるんじゃないよ。」と僕は言って、「うん。」と嬉しそうに頷く聡美ちゃんの頭を撫で撫でしてやった。「でもねえ、可哀想と思うだけじゃ駄目なんだ。」
「どうして?」
「だって、そら、聡美ちゃんのクラスにも可哀想な子がいるだろ。」
「うん、いる。」
「その子に優しくしてあげてるかい?」
「う~んと、してない。」
「何でしてあげないんだい?」
「う~ん、だって、その子みたいに仲間外れにされちゃうもん。」
「その子は仲間外れにされるような悪い子なのかい?」
「ん~ん、悪い子じゃないの。」
「じゃあ、どんな子なんだい?」
「う~んと、ちょっと変わってるの。」
「どんな風に?」
「う~んとねえ、ちょっと気持ち悪くて暗いの。」
「その子は生まれつき異質な所為で皆から認められず苦しくて悩んでるから暗いんだと思うよ。そこに罪はないんだ。なのに、その子はいじめられてるんだろ。」
「うん。」
「そんな罪のない可哀想な子を苛めるなんて悪い事だろ。」
「うん。」
「第一、いじめをして良い理由なんてないんだ。いじめは絶対、悪い事なんだ。聡美ちゃんはそんな悪い事をする者の仲間でいたいのかい?」
「いたくない。」
「だろ、じゃあ、これから、その子に優しくしなきゃ。出来るかい?」
「うん、出来る!」
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