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僕は聡美ちゃんを諭しながら聡美ちゃんも孤独になるんじゃないかと心配になったから聡美ちゃんの純真無垢な真剣な面輪を見ていて悲壮の感に打たれたが、「そうか、偉いねえ、聡美ちゃんは。今日から聡美ちゃんは本物の優しい子だ、本物の勇者だ。」と褒め上げた。
すると聡美ちゃんは例によってにかっと笑ってから言った。
「お兄ちゃんも本物の勇者だよね!」
僕は転校してから暗くなって異質になりいじめられるようになった単なるいじめられっ子に過ぎないのでこの問いかけには答えづらかったが、「ああ。」と力なく呟いた。
しかし、兎小屋の中に視線を移すと、ユーモラスな物が目に飛び込んで来て愉快になって、「あっ!あの細っちょのうさちゃん、欠伸してるよ。聡美ちゃんと同じすきっぱだ!」
「ああ、ほんとだ!細っちょのうさちゃん、あたいとおんなじすきっぱだ!」
「可愛いねえ。」
「うん、きゃわいー!キャハハハ!」
「どれ、聡美ちゃんのきゃわいいもんも、お兄ちゃんにあーんして、よく見してごらん。」
僕はそう言って聡美ちゃんの口をあんぐりさせると、「きゃわいーい!すきっぱのうさちゃんの欠伸よりきゃわいー!キャハハハ!」と笑い、聡美ちゃんと笑い合ってすっかり和んだところで紅葉をぱりぱりと踏みにじりながら、こっちへ駆けて来る足音が聞こえて来た。
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