第二章  まずはそこから

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 だとしたら、問題はちょっとやそっとじゃ解決は難しくなる。彼は記憶を失っているわけだし、時代背景はおそらく江戸中期あたりではないだろうか? 戦国時代とは違い、職に溢れる浪人もいたのだろうな…とだけは想像出来た。  玄関のドアを開け、六衛門を招き入れながら通販で買ったAIに声をかけた。 「アレックス、電気点けて!」  一瞬でパッと室内が明るくなったことに六衛門は身構えるほど驚いている。ホント、いちいちリアクションが大げさで面白いのだ。バイトが終わってひとりで帰ってくる味気なさに比べたら、他人がいる空気ってこんなに楽しかったりするものだろうか?…いや、オレもそもそも物好きすぎるというか、何処の誰だかわかんない、変なヤツを家に上げちゃってるとかちょっと無防備すぎただろうか。 「神崎殿は所帯持ちであったか?」 「え?なんで?結婚なんてしてないよ。第一、この部屋には誰もいないじゃん」 「いいや、戯れてそのような言い方をせずともよい。さきほど、誰かに命じておったではないか?」 「ああ、もしかしてアレックスのこと?AIだよ、人工知能だって」 「えーあい?じんこうちのう?」  これは何から何まで幼稚園児との会話になりそうだ。いやぁ、これはいちいち相手にしていたら夜眠れなくなるかもな。 「まぁ、あとで教えるから。腹減ったからさっきのラーメン、一緒に食べよう!今お湯沸かすからね」  …ね?もう予想つくでしょ?オレが湯を沸かそうとやかんを載せたIHクッキングヒーターのコンロを見て、六衛門といったら…。 「神崎殿は、陰陽師か何かなのか???火が無いというのに、湯を沸かすことが出来るとはおそるべし!!!」  六衛門には、説明することがたった数時間で一気に膨れ上がったのだった。
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