第二章  まずはそこから

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 カップ麺にお湯を注ぎ、3分待つ。三分って何って言えばいいのだろう? オレ、“刻”しか聞いたことないな。 「お湯だけで蕎麦が出来るのか?そんな馬鹿なことはあるまい」  六衛門は腕組みをしてオレの顔を凝視してくる。だからオレも負けじと見返し、絶対的なドヤ顔でカップ麺の速さを断言してやった。 「ほら、3分経った。できたよ、六衛門」  オレは六衛門の分のカップ麺の蓋をはがしてやると、彼の目の前にカップ麺を置いてやった。ふわふわと湯気が舞い、六衛門の顔にレースのカーテンがかかったようになる。 「このようなことが!?信じられん!!」  さすがにもう六衛門の驚き顔には飽きてきたな。でも、もしもオレが過去にタイムスリップ出来たとしたら、同じようなリアクションをしたに違いない。 「いいから、食べてみなよ。ほら、割り箸!」 「箸?なんだ、これは」 「こうやって割るの、見てて」  オレはお手本を見せてみる。それを素直に目を凝らして見ている六衛門。オレは彼にとって何から何まで先生のようだ。 「ほぉ、器用なものだな、神崎殿は」 「これくらいみんな出来るって。ちゃんと切込みが入ってるだろ?六衛門もやってごらんよ」 「ふむ、こうか?」  六衛門はゆっくりと割り箸を()く。 「おお!オレにも出来たぞ、神崎殿」 「そりゃよかった。麺がのびないうちに食べようよ?」  二人で額を突き合わせ、カップラーメンをすすった。うん、これもなんだかひとつの平和な風景だった。
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