第三章 横文字は通じません

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「…すまん、何か奇妙なことでも言ってしまっただろうか」  すまなさそうにしている六衛門に、オレは歯ブラシの使い方を教えてあげる。 「この白い、歯磨き粉…練り粉っていったほうがいいかな?これを毛先につけてさ、口のなかで磨くんだよ。ちょっとからいかもしれないけど、水で漱ぐとすっきりするよ」 「おおっ……」  初めて体験するミント味に咽ながら、オレが蛇口から汲んであげた水入りコップをあわてて彼は口にする。 「大丈夫?」 「…大丈夫でござる。なかなか刺激がありますが、これは漱いだあとに爽快でありますな」  朝の身支度で歯磨き、洗顔、髭剃りなどなどされ、六衛門からむさくるしさがなくなった。ただ、まだ足りないものがある。 「とりあえず、朝ごはんにしようよ?味噌汁が冷めてしまうよ?」  六衛門の分をテーブルに用意し、自分も席に着く。朝から誰かと食事をするのは随分と久しぶりすぎていつから一人だったのかも忘れてしまった。  オレが作る味噌汁はかなり質素だ。小松菜とワカメと油揚げが入っているだけ。本当は葱の味噌汁が飲みたかったんだけど、あいにく切らしてしまっていた。 「六衛門、その格好…というか着ているものの件なんだけれど」  最初はコスプレだと信じて疑わなかった着物だったけれど、さすがに真昼間にその格好で出歩くのは目立ってしまいそうだ。 
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