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第一章 …ってか、アンタ誰?
居酒屋でバイトした帰り道、前から歩いて来る3人組の男に嫌な予感がしていた。今時ウォレットチェーンをジャラジャラさせ、一人はパーカーを頭から被っていて、一人は腰パン、一人は鼻ピアス。まるで絵に描いたような悪役オラオラ系。
何事もなくすれ違った瞬間、すぐに「オイ!」と呼び止められる。
「肩にぶつかっといて、なんにも言わねーのか?コラ」
「ぶつかった?そっちがわざと当ててきたんでしょ?」
「ンだと、コラ!やるのか?」
ヤバい、これってカモられるパターン?
3人相手にするなんて、勝ち目が無さ過ぎる。なんてツイてない日なんだ!マズイなぁ。そう諦めかけたその時、
彼が空から降って来たのだ。
*****
その出で立ちは明らかに変な民族衣装で、オレはてっきりコスプレなのだと思い込んだ。生成りの布で出来た着物みたいな服を着たその男は、オレの胸ぐらを掴んでいたチンピラの腕を片手で捻り上げた。
「イテーー!!!」
「痛いと思うなら、多勢で一人にケンカをふっかけるな」
素朴な衣裳から見える手足は筋骨隆々で、さすがにチンピラたちは勝ち目ないと思ったのか、捨てゼリフを吐いて逃げるように去っていった。
「其方、怪我はないか?」
そなた?時代劇カブレのレイヤーさんなんだろうな。言葉遣いまで拘ってる。
「はい、ありがとうございます」
「このような夜更けになにをしておいでだ?おなごが出歩く時間ではなかろう?」
「……おなご?」
「そのようなか弱き者が夜更けに出歩いてはいかん!」
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