21人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
「アンタさぁ、本当に名前、思い出せないの?ねぇ、何処から来たの?何してる人?ニート?」
矢継ぎ早に質問をしたせいで、彼は苦笑いをする。
「面目無い。因みに此処が何処なのか教えてくれぬか?」
「は?ふざけてるの?此処は東京だろ?」
「トウキョウ?東の京なのか?」
「ここに突っ立っていても拉致があかないから、交番行こうよ」
オレは彼を交番に送り届けることにした。あとは行政にお任せ致す!
やってきたのは最寄りの交番。すぐにお巡りさんに彼を引き渡すことにする。
「名前も住所も判らないんですか…はぁ…それはお困りですね」
しばらくお巡りさんと彼のやりとりを聞いていたが、こっそり逃げるタイミングを計っていた。とにかく今日のバイトはやたら絡むよっぱらいが多くてオレはクタクタに疲れていたのだ。
「拙者が覚えていることといえば、柳沢殿の道場に出入りしていて仕官のいい話があるから来るように…といわれておってだな…」
「はぁ?道場?アンタ、なにか武道みたいなものでもやってたの?ところで腰に刺してるものは何ですかね」
お巡りさんがそれに触ろうとすると彼はその手を叩いた。
「無礼であろう。これは武士の魂なのだ」
「いや、こっちも仕事なんでね、見せてもらうよ?」
お巡りさんもさすがにイラっとしたのか、強引に彼の腰に刺しているものに手をかける。
「ん?これは刀か!?こんな長さの刃物を持ち歩くのは、銃刀法違反で逮捕させてもらわないと!!」
最初のコメントを投稿しよう!