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第二章 まずはそこから
オレたちは開いている深夜スーパーに立ち寄った。六衛門は落ち着かない様子であたりをキョロキョロしている。
「こんな時間に自分で飯を作るのもかったるいしなぁ」
独り言でも六衛門に聞かせるわけでもない呟きをして、カップ麺の棚を観ている。
「あいすまんが、其の方は何を探しておるのだ?」
「何って…とんこつ味にするか、味噌味かしょうゆか、迷ってるんだけど」
「この紙のような丼がか?」
「……まさかと思うけど、カップ麺を知らない…とか?」
嘘だろう?と思いながらも訊ねれば、六衛門は当然といわんばかりに頷いた。
「うーん、なんて説明すりゃいいんだろ?いわゆる、唐から来た蕎麦?みたいな」
調子に乗って日本史に出てきた適当な中国名を出してみる。我ながらかなりでたらめ。ところが六衛門は「おお!」と物凄くありがたい顔をした。どうやらでたらめが通じたらしい。
「そのような貴重なものを馳走になっては申し訳ない」
「いやぁ、アンタ、助けてくれたじゃん。オラオラ系に絡まれてたのを」
「……あのようなは輩は捨て置けんのだ。私の性に合わん。つい手が出てしまっただけだから、其の方が気にすることはない」
古き良き時代の言葉を、それはそれは舌を噛むことなく流暢にのたまう。ここまで成りきってる(コスプ)レイヤーさんも大したものだと思う。
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