またね。

5/6
前へ
/6ページ
次へ
そう言えばと、洋子は思い出していた 亡くなった父が病院で握手しようってよく言ってた 父も曖昧な自分が心細くなって人恋しかったのかも知れない 段々、わからなくなってきた時あんなに元気ハツラツだった父が正気のない顔をしていたのを思い出した きっとまん吉もそんな混濁した時が増えてきているんじゃないかと思う 洋子は急に 心の中とは言え、まん吉と呼ぶのがはばかられるような気になってきた よ〜し、わかった わかったよ、まん吉さん 少しぐらいなら、つかんでも触っても目くじらたてないで だめですよ〜 コラコラ! お金とりますよ〜 旦那が乗り込んで来ちゃうからダーメ なんて言いながら老い先短い日々を楽しんでもらおうと思うようになった そんな日々が続いたある日の朝 洋子の携帯が鳴った まん吉さんの娘さんからだった 今朝早く様子がおかしくなったので救急車で病院に入院したんです それで 一生懸命、尽くして頂いたんですが 父は 亡くなりました ですから洋子さんに今日いらして頂く予定でしたが・・・ ・・・残念・・・です では仕事ではなくお家の方に先に行っていますね 色々やる事がありますよ しっかりして 娘さんは力なく はい、ありがとうございます と絞り出すのがやっとだった
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加