好意の証明

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好意の証明

「おかえりー早かったね。どうだった?」 とぼとぼと学食へ戻ると、川名はさっきまでと同じ席でスタミナ丼を食べていた。 「…よくわかんない」 「わかんない?何が?」 「好きだって言ったら、三角形がどうとか…」 「三角形…?」 「本当に好きなのか証明しろって言われて、三角形の合同が…なんだっけな…」 「混む前に蜂谷も昼ごはん買ってきたら?」 「あ、うん…」 言われるがまま麺コーナーへ向かい、塩ラーメンを買って席に戻ると、川名は大半を食べ終えていた。 「まあつまり、蜂谷は守門に信用されなかったってことだよね」 「………」 無言で塩ラーメンをすすった。そんなこと、わざわざ言われなくてもわかる。 「じゃあ選択肢は2つだ」 「何と何?」 「信じてもらうか、諦めるか」 「僕はちゃんとはっきり好きだって言ったもん。それを信じない守門が悪い」 「俺も諦めた方がいいと思うよ。そんなめんどくさいこと言うヤツ」 「川名はめんどくさい人としか付き合ってないのに?」 「めんどくさい以上に好きだから。蜂谷はそうじゃないでしょ?」 「……もうちょっとくらいなら、頑張ってもいいけど」 うつむいてぼそぼそ話したのに、川名にはしっかり聞こえていたらしい。なんだか嫌な気配がして顔を上げると、川名はかなりにやにやしていた。 「それなら、守門が言う証明をしてあげたら?」 「証明って、どういうこと?意味わかんないんだけど…」 「立証するためには、自白、証言、物証が必要だよ」 「……ん?」 「自白だけだと信用されなかったから、次は証言か物証を提出すればいいと思う」 三角形ほどじゃないけどおかしな話になっている。川名、刑事ドラマでも見たんだろうか。 「ということで、俺が証言してやるよ」 「証言って何?」 「守門に、蜂谷は本当に守門のことが好きなんだって俺の口から説明する」 「はあ?そ…そんなことするの…?」 「嫌ならやらないよ。蜂谷の気持ちが一番大事だからね」 「だ、だって、普通、そんなの言われてじゃあ信用しますなんてなるわけないじゃん」 「守門は普通の人間ではないからわからんよ」  守門が普通じゃないのは百も承知だ。だからって、川名の言葉を聞いてすんなり信じるなんて、とうてい思えない。 でも、他に手段は思いつかないし…。 「う…ううう………お願いします」 「はっは。わかった。じゃあ守門のどこが好きか教えて」 「えっ?」 「守門に説明するから、教えて」 「それ必要なの?」 「うん」 「だから…僕のところを好きなところが…好き?なんだって」 …辱めを受けているみたいだ。 「そういう人は、今までもいたんじゃないの?」 「いや、だって、変じゃん。小学生の頃からだから…12年くらい片思いしてるんだよ?その間全く関わりがなかったのに。しかも結婚するために留学して医学部入って香水作って…なんて、そこまでする人絶対他にはいない。気持ちも行動も重すぎて…好き…だと、思う…」 ぐわーっと頬が熱くなってくる。なんでこんなこと、川名なんかに話してるんだろう。 「わかった。じゃあ守門には俺からそう話しておくから」 「今のを話すの…?馬鹿みたいじゃん!」 「どこが好きかなんてそんなもんでしょ。正直に言ったほうが信じてもらえるって。まあ、任せてよ」 川名はにこにこ笑って親指を立てた。 正直不安だけど…何もしないよりはいいのかな…。
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