結婚とは

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結婚とは

あっという間にデートの日が来た。一体どこへ連れて行ってくれるのか。あれ、なんかこの道見覚えがある。まさか…いやでも… …なんて考えているうちに到着したのは守門の実家のケーキ屋だ。 「付き合って初めてのデートで実家…?」 「新作が出たそうです。桃を使っていておいしいらしいので食べましょう」 「食べるけど…実家……」 「実家だとよくないですか?」 「よくないわけじゃないんだけど…」 「じゃあ行きましょう」 家族ぐるみの付き合いでもないのに、初デートで実家は重い…。でも、守門にそういうのは伝わらない気がする。 「いらっしゃい」 守門の実家のケーキ屋に着いた。前回と同じく立葉さんが店頭に立っている。 「えっと…こんにちは…」 守門が立葉さんに何か話しているのかわからないから、とりあえず中途半端にお辞儀してしまった。 「みつるくんと結婚を前提に付き合うことになったから連れてきた」 「えっ」 僕と立葉さんが同時に声を上げる。 「へえ………」 「待って待って待って待って」 守門の腕を引っ張って店の外へ出た。 「え、これデートじゃないよね?どう考えても結婚の挨拶だよね?」 「デートで実家に行くと結婚の挨拶ということになりますか?」 「いや…なんで結婚を前提にって言ったの?」 「だってそうですよね」 「仮にそうだとしても、勝手に他人に」 「仮にそうだとしても??」 守門は目を丸くしている。 「え、あの、どっちですか?」 「うん?」 「みつるくんは俺と結婚するんですか?しないんですか?結婚するために付き合ってるんだと思っていましたが勘違いですか?だって前そう言ってましたよね?俺は細かいニュアンスを読み取れないのではっきり言ってください」 「わ…わかった。とりあえず中で話そう」 「今教えてください。姉ちゃんにどう説明するのかが変わってくるので」 「真白は結婚を何だと思ってるの?」 「配偶者としての関係性の成立です。同居や貞操の義務があります」 「え、ええ…?」 「どうした?なんか揉めてる?」 外に出た僕たちを心配したのか、立葉さんが店から顔を出して声をかけてくれた。 「俺たちの交際が結婚を前提としているかどうかについて話し合ってた」 「そんなの店先でする話じゃないでしょ。蜂谷くん困ってるじゃん」 「困ってましたか」 守門は素早くくるっと僕を振り返った。 「まあ…困ってたけど」 「すみません、気が付きませんでした。それなら俺の部屋に案内します。そこでケーキを食べましょう」 「うん…」 「真白、待って」 立葉さんが守門を呼び止めた。 「何?」 「新作ケーキ持って行ってあげるから、紅茶買ってきて」 「嫌だ。姉ちゃんが行けば」 「わたしは店番があるから」 「だったら紅茶はなくてもいい。今忙しいから」 「このケーキの美味しさを最大限引き出すのはダージリンティーしかないわけ」 「……しょうがないな。蜂谷くん、行きましょう。美味しいケーキのために」 「蜂谷くんはわたしがおもてなしするから、あんた1人で行ってきなさい」 「みつるくん、ほぼ初対面の姉と2人きりなんて嫌ですよね?」 守門は困ったような顔で聞いてきた。守門には全く通じていないけど、おそらく立葉さんは守門をこの場から退出させようとしているんだろう…。 「…大丈夫だよ。真白のお姉さんなら、仲良くなりたいし」 「わかりました。みつるくんは本当にいい子ですね。ちゃっと行ってきます」 守門は早歩きでスーパーの方へ向かっていった。 立葉さんは頬に手を当て、守門の後ろ姿を見送っている。 「悪気はないんだけどね…」 「あ…はい。悪気がないのがウリですね」 こくりと頷くと、立葉さんはにこっと笑った。 「伝わってるならよかった。でも、大丈夫?蜂谷くん、結婚するつもりじゃないんでしょ?」 「…え?」 「真白は強引だしちょっと非常識なところがあるじゃない?蜂谷くんがそれに付き合う必要はないからね」 「結婚…するつもりがないわけじゃ…」 「えっ?冗談」 立葉さんは軽く笑い飛ばした。 「真白は社交辞令とかわかんないからね?蜂谷くんがするって言ったら本当にしちゃうよ。よく考えなよ」 「………」 「蜂谷くんがいいならわたしは口を出さない。ケーキだけ出す。でも流されずに、ちゃんと話し合ってね」 結婚…結婚……。 結婚って何?何のためにするんだっけ。 「プロポーズは最大限の愛情表現」って守門はたしか言ってた。 でも…そういうもんだっけ?わかんないな…。
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