いきのこる。

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いきのこる。

『皆さん、起きてください。ゲームが始まります。起きてください』  突然、キンキンする声と共に私は目覚めた。勢いよく体を起こそうとして、日頃から痛めている腰に力を入れてしまい、思わず呻くことになる。  なんなのだ、朝から想像しい。また、隣の家の主婦が騒いでいるのだろうか。だからあんな奴、さっさとこの区画から追い出すべきだと訴えたのに――いや、しかし今の声は女のものではなかったような。 『皆さん、起きてください。ゲームが始まります。起きてください』 「ああもう!煩いわね、何回も言わなくたって分かるわよ!」  同じセリフを繰り返され、私は思わず怒鳴っていた。頭がガンガンする。目を開けて、ようやく自分が異様な状況に置かれていることに気づいた。目に見える景色が、いつもの見慣れた家の黄ばんだ天井ではなかったからだ。  奇妙な狭い部屋だ。まるでポッドのような形をしている。立ち上がれば頭がついてしまいそうなほど低い天井、幅は両手を広げた広さもない。そんなところで一人、私は寝かされていたらしい。一体何がどうなっているのだろう。特に異様なのは――どうにもこの部屋の壁は、全て透明になっているらしいということである。  そう、壁の向こうが透けて見えるのだ。壁の向こうには同じような部屋がいくつも並んでいるのが見えた。そこには、老若男女様々な人々が、同じように人部屋に一人ずつ閉じ込められているらしい。ほとんどの人間が、大きすぎるアナウンスの声に目を覚ましていた。そして、状況が全く分からず困惑している。全員私と同じように、無理やり連れてこられたということなのだろうか。 『皆さん、ほとんどの方が起きて来られたようなので説明します。偉大なる我らが王のお言葉をお聞かせします。どうか、一人たりともお聞き逃しのないようにご注意ください』  王。そう言われて思い浮かぶ存在は一人しかいない。この国を恐怖で支配する、現人神とも言われる王様のことだ。彼が気に食わない人間はその場で処刑され、裁判も行われないと言われいる。しかも、処刑の方法が極めて残酷。人を生きたままミンチにすることさえあるという。  つまり、この拉致監禁はその王様の意思だというのか。私の顔から一気に血の気が引いていく。
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