いきのこる。

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『私が、偉大なる王である』  そして、響き渡った低く、やや酒に焼けた声にますます絶望した。紛れもない、それは時々国営放送で聞く王様の声に他ならなかったのだから。 『私は現在のこの国の状況を、心の底から憂いておる。人々は争い、環境は汚染され、残り少ない食料を愚かな者達で奪い合う現実。娯楽が次々と失われ、人々の心は荒む一方だ。……その全てを解決する、画期的な方法を私は思いついた。争い、奪い合うのは。愚かな人間が“増えすぎた”ためだ。この国に、グズで生きる価値のない人間が多くはびこるがゆえに悲劇は起きている。そういった人間達は、この機に一掃されねばならない……。優れ、思いやりに溢れ、進化の可能性を残した者だけが生き残るに値するはずだ』  何を、言っているのかわからない。混乱する。混乱する。そして。 『君達は、そこから命を賭けて脱出してもらう。そして、一番最初に脱出出来た者を勝者とし……優れたる者として王家が認定、一生援助を与えることを約束しよう。君達は、その栄誉あるチャレンジャーに選ばれたのだ!』 「ちょ、ちょっと待って……!待ってください!」  馬鹿、と私は舌打ちした。あの王様の言葉を遮って質問しようだなんて、命知らずにもほどがある。叫んだ者は、少し離れた場所のポッドの人物のようだった。やや衰えた私の視力でもどうにか見終える距離――どうやら若い女性であるらしい。彼女は真っ青になって震えながら、後先も考えずに悲鳴に近い声を上げている。 「チャレンジャーって……脱出できなかった者はどうなるんですか!?殺されるってことですか!!なんで、なんで私が!?私、何も悪いことなんかしてないです。それなのに、どうしてこんなっ!」 『我が話の途中で口を挟むとは何事か!そのような者に、生き延びる資格などないわ!』 「ひっ」  次の瞬間――彼女がいた部屋の下から、何かが思い切り突き出していた。それは、巨大な針のようなもの。針は思い切り――彼女のスカートの中、下着に包まれていたであろう股間を貫通し、思い切り頭まで突き抜けたのである。上がるはずだった絶叫は一気に濁り、血飛沫と共に飛び散った。  ポッドに閉じ込められていた人々から悲鳴が上る。どうやら女性はそれでも一撃で死ぬことができなかったらしく、まだ手足をバタつかせてもがいていた。その足から、血と混じって汚物や汚水がだらだらと流れ落ち、透明なポッドの中に溜まっていくのが見える。凄まじい光景は――私達に現実を思い知らせるのに十分だった。  王様は、本気だ。本気で、自分の眼鏡に叶わない人間を殺すつもりでいるのだ。
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