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 僕が両親に話したことは、勿論大学さんに本を読んでもらったことです。アメリカのヘミングウェイと言う人の本なんだよ──と言っても、両親はピンと来ない様子でした。  両親は少し戸惑ったような顔をしていました。それはヘミングウェイに対してなのか、大学さんに対してなのかは分かりません……もしかしたら両方に、だったのかも知れません。  僕は大学さんに本を読んでもらってそれがとても嬉しかったことを、また主人公の老人が一人きりでいかに勇敢にカジキマグロと闘ったかを身振り手振りで説明しました。  僕が余りにも一生懸命に話すものですから父も母もやっと僕の話に興味を持ったみたいで、それから話が妙なふうに流れて行って、 「じゃ、お礼に夕飯にでも誘おうか」  と父が言い始め、話はあれよあれよと進んで、僕はその話の流れに少々戸惑いましたが、結局、大学さんを食事に招こうということになったのです。   僕は翌日学校から帰るとまたお宮さんに走って、大学さんにそのことを話しました。 「おじさん、うちのお父ちゃんとお母ちゃんが、晩御飯を一緒に食べませんかって……言ってるけど」──と。
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