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 当然、大学さんは簡単には首を縦には振りませんでした。でもこう見えて僕は非常に頑固で押しの強い特性を持っています。そういう特性を持った僕の熱心さと必死さに、とうとう大学さんは陥落しました。 「そういうことは僕は苦手なんだよ本当に。でも……君がそこまで言うのなら、お邪魔させていただくよ」    今思えば僕は強引過ぎましたね。子供というものは加減が分からないものです。    よその家にお邪魔するなんて、大人たちとの交流を避けているように見える大学さんには、とても勇気のいることだったろうと思います。それはそうです。あの頃の大学さんは何せ、完全なる世捨て人でしたから。  それでも満を持しての食事会は、ぎこちないものではありましたが、素晴らしかった朗読の時間と同じくらいに、今でも僕の人生の出来事の中で群を抜いて輝いています。  大学さんには気の毒でしたけど……。  
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