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 ここで話を続けるためにはどうしても、大人になった今思い出しても胸が痛む、ある事件のことを語らなければなりません。僕と大学さんとの思い出はその事件のせいで、胸が張り裂けるほどの筆舌し難い無残な形で終わりました。  それは大学さんの隣で僕が不覚にも涙を流した翌日のことです。一番鶏も鳴く前のまだ一日が始まるには早すぎる時間でした。村に天地をひっくり返すような前代未聞の事件が起きたのです。  僕の少年時代を一変させるような大事件です。  今だに人生であんな悪夢のような騒ぎを、経験したことは一度たりともありません。いま思い出しても実におぞましい、僕の村だけではなく国中をも震撼とさせた恐ろしい事件でした。それは……村の裏山の墓地で、幼い子供の遺体が発見されたという事件です。  亡くなっていたのは、隣町に住む小学一年生の女の子でした。  ここから話すことは騒ぎの後に、村人の間で口々に伝えられた事件の日の概要です。かなり、まわりまわっての話ですから、隅から隅まで真実かどうかは分かりません。  
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