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 事件が発覚した日の朝方のことです。  村の一人の老人が部屋の空気を入れ替えるために窓を開け放つと、異常に吠え立てる複数の犬の鳴き声に気付きました。それは村のご先祖様の墓がある裏山から聞こえてきます。それはそれは激しい鳴き声です。老人はとても尋常じゃない犬の鳴き声に「これは、只事じゃないぞ」と慌てて外に出ました。外に出るとやはり犬の鳴き声は裏山の方から激しく鋭く聞こえてきます。  老人は隣に声を掛けました。  そこの主人が何事かと、寝間着のまま顔を出して、やがて、反対隣の主人も同じく犬の鳴き声に気づいて起きてきました。男たちは何事だろうかと互いに話し合って、思い切って三人で山に登ることにしたのです。    山といっても小高い丘くらいのもので、男衆は朝露に足を滑らせながらも、あっという間に墓場になっているところまでたどり着きました。  すると三頭の野良犬が、昔から放置してあった長さ百五十センチ横幅五十センチくらいの窪みを囲み、耳をピンと尖らせて激しく吠え立てているのが見えたのです。  男たちはいつも近所で見知っている三頭の野良犬を追い立てて、窪みに近づきとうとう騒ぎの元を目の当たりにしました。    それは幼い女の子の遺体でした──。  
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