3/15
前へ
/46ページ
次へ
 女の子の痛ましい体は乱れた様子はあまり無く、きれいな姿で横たわっていました。童話に出てくるような赤いワンピースを着た可愛らしい女の子です。一見女の子は眠っているように見えました──が、それはあくまでも発見した大人たちの望みであり、朝露に濡れた髪がぺったりと張り付いた血の気の無い顔は、すでに命の灯火が消えていることを見せつけていました。  皮肉にもモノクロ写真のような灰色と黒い墓石ばかりの墓地の中で、赤い服の女の子の姿だけが色鮮やかに浮かび上がっていたのです。男たちは棺にも見える窪みを囲んで一言も発すること無く、しばらくの間ぼう然と立ち竦んでいました。その日は晩秋へと向かう冷たい朝で男たちの吐く息は白く、そのまま凍りつきそうな沈黙の中、時が止まってしまったかのようでした。  大の男らが声も出せないくらいの、全身をいっぺんに殴られたような衝撃を食らったのでした。  以上が誰からともなく村に伝った、事件発覚の朝の概要です。  
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加