新妻探偵事務所・エピソード零

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 年末には雪が降り──年を越したかと思えば、はや二月。  一月はどこにいったのだろう。  時の経つのは早いねぇ。光陰矢の如し。昔の人はよくいったもんだ。  そう──窓の外を眺めながら黄昏れているのは、この事務所の所長、新妻雅(あづままさし)34歳。  僕は今、何をしてると思う? ふふ。窓の外なんか眺めてさ。  実はね、何もしてないんだよ。  このシリーズって、僕がぼーっとしている出だしが恒例でさ、後の伏線かと思いきや、意味はないらしい。  ないのかよ。  まあそんなわけで、表でビラを配るワケにもいかないし、辛抱して客人を待つ日々さ。  退屈だけど、これも仕事のうちなんだ。  言い忘れていたけどここ、探偵事務所だからね。    しかしただ待っているのも芸がない。  何かこう……なんだ。とりあえず今後のことでも考えよう。  まずは形から。  『考える人』のポーズをとることにする。  え? 『考える人』って何かって? ロダンだよ、彫刻のアレだよ。  知らない? ググリなさい。  え? 『ググる』って何かって? Googleで『ググる』と調べなさい。  とはいえあの彫刻、どんなポーズだっけ。ネットで検束すればいいんだけど、それだと負けた気になる。
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