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「こんにちわ。ちょっと近くに寄ったもので……」
続いて探偵事務所にふらっと入ってきたのは前野良輝。
「おつかれっス。休憩時間なんで、お邪魔するっス」
年末、ちゃんこ鍋の件でお世話になった、元力士の上野大介さん。
「新妻くん、暇だったらうんっ、釣りにでもいかないかい?」
そして謎の研究者、小森隆さんが入ってくる。
今は二月だけど、どこで何を釣るのだろうか。それはそれで興味がある。
うーん。男ばかり同時に入ってこられてむさ苦しいことこの上ない。
日常パート編だからと我先に集まってきおって。テレビカメラの前に群がる野次馬みたいだ。
ここでしか出番がないと見抜かれてるな……え? 何の話かって? なんでもない、独り言だよ。
「皆様、お茶をどうぞ」
愛理が新妻探偵事務所名物、シラガデ茶をふるまう。
しかしなんだな。この事務所もずいぶんと賑やかになったもんだ。
当初はぼく1人しかいなくて──それどころかずっと一人でやっていくとか思っていたもんなあ。
愛理が来てくれてもう三年か……。思い起こせば様々なことがあったな。
え? 三年も経つのに毎日こんな調子でどうやって生活をしているのかって?
たまに依頼があるんだよ。日銭くらいにはなる仕事がさ。
あと僕は、まあ趣味の範囲だけど手品をやっていて、それは『マフラー』の回で語る予定だったんだけどさ……。
「先生、一月は仕事入っていたんですか? いつもお暇そうでしたけど……」
「大丈夫ッスか? 新妻さん。なんだったら自分も仕事、紹介しましょうか?」
「新妻くぅん。よかったら私の研究に付き合ってくれたもいいんだよ? うん、ケロヨンとブイヨンと今はね、サムゲタンの研究をだね……」
「草むしりでもしてくれるかい? 家賃をちったあ考えたげるさね」
「所長、そろそろ、くうたろうにベッドを買ってあげたいんですけど。いつも所長のお腹で寝てるからズルいです」
うーん気が散って回想に集中できない。
そう、あれは三年前、愛理がウチに尋ねてきてくれた時──
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