61人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
飼い猫かもしれないので、近所、ネット、聞き込みなど捜査網を駆使したが、飼い主ですという人物は現れず、晴れて事務所で飼うことになった。
愛理とは時々会話をしているのだが、ぼくはよく噛まれる。なぜなんだ。
さらにぼくが寝ていると、高確率でお腹の上で丸まって寝られるので、うなされることが多い。
「ところで所長、くうたろうは?」
猫大好き愛理くんは、いつものように真っ先にくうたろうを探すが、今朝は彼女(メスなんだよ)の姿が見えない。
「ああ、屋上のテントで寝ているよ」
「屋上?」
愛理がちらりと天井に目を向けた。
この事務所は二階建てで、屋上も行けるようになっている。
屋上のテント──というのは、ぼくには変わった趣味があってね。
大家さんに許可をもらい、屋上に特設のテントを置かせてもらっているんだ。
元々アウトドアが好きなぼくは、昨日の夜、屋上で七輪にサンマを乗せて焼き、キャンプ気分を味わっていた。
サンマとタバコとビール。いいねえ三種の神器だよ。
愛理が事務所に入ってくれてから、滅多に一人ソロキャンプをする機会がなくって、昨日は久しぶりにテントを張ったんだ。
最初のコメントを投稿しよう!