新妻探偵事務所・エピソード零

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 飼い猫かもしれないので、近所、ネット、聞き込みなど捜査網を駆使したが、飼い主ですという人物は現れず、晴れて事務所で飼うことになった。  愛理とは時々会話をしているのだが、ぼくはよく噛まれる。なぜなんだ。  さらにぼくが寝ていると、高確率でお腹の上で丸まって寝られるので、うなされることが多い。 「ところで所長、くうたろうは?」  猫大好き愛理くんは、いつものように真っ先にくうたろうを探すが、今朝は彼女(メスなんだよ)の姿が見えない。 「ああ、屋上のテントで寝ているよ」 「屋上?」  愛理がちらりと天井に目を向けた。  この事務所は二階建てで、屋上も行けるようになっている。  屋上のテント──というのは、ぼくには変わった趣味があってね。  大家さんに許可をもらい、屋上に特設のテントを置かせてもらっているんだ。  元々アウトドアが好きなぼくは、昨日の夜、屋上で七輪にサンマを乗せて焼き、キャンプ気分を味わっていた。  サンマとタバコとビール。いいねえ三種の神器だよ。  愛理が事務所に入ってくれてから、滅多に一人ソロキャンプをする機会がなくって、昨日は久しぶりにテントを張ったんだ。
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