新妻探偵事務所・エピソード零

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 今は二月だろって? それがいいんだよ。  外は寒いのに特設ストーブのついたテント。凍え死ぬかもしれない緊張感の中で食べるサンマとビールがたまらないのさ。    ところがねぇ。  テント内ではサンマを焼けないので、外でサンマを焼いててさ。  珍しく大家さんも留守だったし、1人でのんびりできるなって。ウキウキしながらテントに戻ったのさ。  そしたら、特設ストーブのベッドの上で、くうたろうが丸まっていてさ。 「おーい‼ そこはぼくの場所なんだけど……」 「ZZZ……」  寝てる。絶妙にいいポジションをとられていて、落ち着かない。 「おーい、テントを返してくれよぉ」 「ZZZ……」 「サンマ一匹あげるからさあ」 「ZZZ……」  だめだ。寝てるワン。  せっかく星空を眺めて一人、サンマ&ビールを満喫しつつ、キャンプ気分を味わえると思っていたのにっ。  これじゃあ『キャンプ』じゃなくて『ニャンプ』だよ。 「そういうわけで……あれ? 愛理?」  気づけば愛理の姿はなかった。  屋上に行ったようだ。ほんとにねえ、くうたろう大好きだからなぁ彼女は。
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