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たまにはお茶でも入れてあげようか。いつも彼女に任せて悪いからね。
少し待っていると、事務所のドアが開いた。
「おかえり。寒かっただろう? お茶が入ってるよ」
「邪魔するよ。なんだいお茶だって? 気がきくじゃないか」
入ってきたのは、愛理ではなく妖怪だった。
「ちょっと待って下さい。いまお茶を入れなおすんで」
「かまやしないよ。ちょうど喉がかわいてたのさね、このお茶かい?」
「いや、それは愛理の分なんで、ぼくが入れてきますよ」
「おや気がきくね、何たくらんでんだい?」
「たくらむなんてそんな。どうぞ。これは、新妻事務所名物『シラガデ茶』ってやつでして……」
「そりゃ逆から読んだら『出がらし』じゃないか‼ 家賃倍にするよ‼」
ヒエエ、バレてしまった‼
「すんませんっ、年末の残りの焼酎を出すんで、許して下さい」
焼酎というところが、我ながら微妙にセコい。
「昼間っから酒なんてね、アタシを酔わせてどうしよってんだい」
「そのまま寝てくれたら、静かになるかと」
「なんだってぇ!?」
いつものやりとりが始まった最中、気づけば愛理が、カメラを回していた。
肩にくうたろうを乗せている。
「おや愛理ちゃんにくうたろう、こんにちわ」
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