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「おはようございます。大家さん」
「くうたろうも元気そうだね。七輪で焼いたサンマでも食べてあたたかいベッドの上で寝てたみたいな顔してるじゃないか」
例えが具体的すぎるぞ。
この妖怪は人だけじゃなく猫の心まで読むことができるようだ。
「ニャ~♪」
くうたろうが大家さんにスリスリしている。
「人見知りしない子だねぇ。よしよし」
「いい映像が撮れそうです」
愛理が冷静にカメラを回し続けている。
ううーんぼくの存在がまるで狸の置物だ。
くうたろうも気持ちよさそうに喉を鳴らしているし……。
いいなあ。ぼくだってほんとは猫が好きなんだよ。撫でたい。
今なら機嫌がよさそうだし……。
意を決してそーっとくうたろうに近づき手を伸ばす。
ガブッ!!
「いだぁ」
また噛まれたっ。なんでぼくだけっ。
「愛理ちゃんそれはなんだい?」
ぼくが噛まれたことは完全にスルーである。
大家さんの関心は愛理の持つビデオカメラだ。
「アレですよ。みなさんの行動を撮らせてもらっていて……」
「ああ、前に話してたアレのことかい」
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