61人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
年末には雪が降り──年を越したかと思えば、はや二月。
一月はどこにいったのだろう。
時の経つのは早いねぇ。光陰矢の如し。昔の人はよくいったもんだ。
そう──窓の外を眺めながら黄昏れているのは、この事務所の所長、新妻雅34歳。
僕は今、何をしてると思う? ふふ。窓の外なんか眺めてさ。
実はね、何もしてないんだよ。
このシリーズって、僕がぼーっとしている出だしが恒例でさ、後の伏線かと思いきや、意味はないらしい。
ないのかよ。
まあそんなわけで、表でビラを配るワケにもいかないし、辛抱して客人を待つ日々さ。
退屈だけど、これも仕事のうちなんだ。
言い忘れていたけどここ、探偵事務所だからね。
しかしただ待っているのも芸がない。
何かこう……なんだ。とりあえず今後のことでも考えよう。
まずは形から。
『考える人』のポーズをとることにする。
え? 『考える人』って何かって? ロダンだよ、彫刻のアレだよ。
知らない? ググリなさい。
え? 『ググる』って何かって? Googleで『ググる』と調べなさい。
とはいえあの彫刻、どんなポーズだっけ。ネットで検束すればいいんだけど、それだと負けた気になる。
最初のコメントを投稿しよう!