あなたの手

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最初はなにも知らずに、私はばあちゃんの家に行き、ひいばあちゃんとテレビを見ながら他愛もない会話をしていた。 でも、いつ行ってもいないばあちゃんが気になり、ひいばあちゃんに「もう1人のばあちゃんどこ行っとん」と聞くと、ひいばあちゃんはしわしわの顔を一層しわしわにして「パチンコじゃ」と言った。 だけどこの時は、そうなんだ、くらいにしか思っていなかった。 だって、別にパチンコは悪いことじゃないし、自分たちのお金の範囲でやるなら、何も文句はないじゃないか。 状況が変わったのは、いつかの夏。 まだ学校に行ってなかった私は、いつものようにばあちゃんの家に行き、ひいばあちゃんに会いに行った。 この日は、ばあちゃんがいるようだった。 「金出せ!このくそばばあ!」 聞こえてきた怒声は、知っている人の声じゃない、とすら思った。 強盗に入られたのだろうか、と思いながらも部屋に入って行くと、強盗はばあちゃんだった。
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