あなたの手

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ひいばあちゃんに馬乗りになり、髪を掴み、床に頭を打ち付けている。 ひいばあちゃんは泣きも喚きもせず、じっとその暴力に耐えていた。 「金どこだよ!てめえの通帳の中空っぽじゃねえか!」 「ない。お前が全部使った」 「何言ってんだよ!父さんの遺産たんまりあっただろうが!うん千万あったの知ってんだぞ!」 「何年前の話しとるん」 「金出せって!」 私がみていることもそっちのけで、ばあちゃんはひいばあちゃんの髪をつかみ、引きずり、通帳を出せと棚の前で叫んだ。 だけどひばあちゃんは頑なに「お前に渡したもん以外はない」と言った。 私は、何も言えないまま、じっと暴力を見ていた。 本当は止めに入らなくてはいけないのに、足がすくんで、何も言えなかった。 結局、ひいばあちゃんに財布に入っていた5,000円を奪い、私には一瞥もくれぬまま、ばあちゃんは去って行った。
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