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1.ヒーローなんてしたくねぇ
「白いボディのニューヒーロー。正義の味方、シープマン!」
街の広場の空を覆った、スカイ・ヴィジョンにニュースが映る。
正体不明のヒーローが、犯罪組織の悪の首領をたったひとりで捕まえたとか。
(よせやい、そんなつまんねぇ話)
……ちっとも金になりゃしない。
思わずちいさくため息がでた。
この際だから言っとくが、おれはヒーローなんてきらいだ。
悪事の度にホイホイ呼ばれ、だれかのためだ、正義のためだと命からがら戦ったのに、「見返り」求めちゃいけないなんて……
そんなの損してばっかじゃねえか。
勝っても負けても損ばっかりだ。
(あーあ、ちくしょう、バカらしい。おれはそんなのゴメンだね、やりたいやつの気がしれねぇや!)
心でさんざん悪態ついて、うなだれながら歩きだすおれの、背後で自動ドアが閉まって、さっきまでいたパチンコホールの熱気がウソのように途切れた。
(ヤバいよなぁ、マジでヤバい……月に一度の『支給日』なのに……初日で半分、もっていかれた……)
今日は朝からとにかく負けて、ヤバいヤバいとわかってたのに、
(次で勝てる……まだ勝てる……)
ねばりにねばってあがいた結果、きれいさっぱりスカンピン♪
……知ってるさ、おれはとことん諦めがわるい。
だからいつも損ばかりしている。
奈良部羊一、17歳。
バカに生まれて17年目、本気のピンチに直面中だ。
(『あいつら』ぜったい怒るだろうな。なんとか家に帰り着くまえに、うまい『いいわけ』考えないと……)
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