1.ヒーローなんてしたくねぇ

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「……やだね。()り気じゃねーんだよ」 シープマンはこの「おれ」だから、おれは即座に却下した。 「どーせ、いつもの『タダ働き』だ。正義で腹が膨れるか、ん?」 安い挑発かもしれないが、問題はかなり切実だった。 ヒーロー稼業は儲からない。 現にこの前の捕物帖—— さっきニュースで流されていた、「ヤクザ共とのドンパチ」だって、 結局「機密」扱いにされ、ビタ一文ももらえなかった。 つまりはただのボランティア。 ボランティアなんておれはゴメンだ。 「あのなぁ、(ミツル)、考えてくれ。おれたちゃ(カネ)がねーんだよ。おれの家族がひと月暮らしていくのにどれだけ掛かるのか、おまえはわかっちゃいねーんだ」 「だったらパチンコなんていくなよ」 論破は2秒で終わったが、(ミツル)は渋い表情をつくり、 言いにくそうにこう告げた。 「今度は出るぞ、報酬が。『実験協力費』というやつだ」 「マジかそれ! なら受ける!」 「……だったらさっそく紹介しよう。飛鳥(アスカ)くん、入りたまえ」 それを合図に、 「失礼します!」 凛とひと声ドアがひらいて、若い婦警が現れた。 ……名前を呼ばれるまでずっと、律儀に部屋の外にいたらしい。 ひと目で「まじめなやつ」とわかった。 知性を感じるシャープな目つき、きりりと引き締まった口元。 髪は後ろでポニーテールに、スレンダーボディを制服に包み、 きびきびとしたその歩き方は、まるで背骨の代わりに「竹刀」かなにかを埋め込まれてるみたいだ。 「大八木警視! お呼びでしょうか!」 模範みたいな敬礼に、思わずギャラリーたちの間でパチパチまばらな拍手が起こる。 「彼女の名前は『飛鳥(アスカ)マークⅡ』。警視省の特務捜査官だ。いいか、羊一、いや、シープマン。今後の仕事は彼女とふたり、『ペア』を組んで動いてもらうぞ!」 「え……? はあ? どういうこったよ?」
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