1.ヒーローなんてしたくねぇ

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「『実験協力費』と言っただろ。いいか、これは『実験』なんだ。彼女の『性能』を試すための……」 大八木充(オーヤギミツル)がそう言って、婦警の腕をひょいと取ると、 持ち上げられた腕が肘から「ポキリ」と折れて中からなにか…… 「レーザー銃」が飛び出してきた。 「わっ、ちょっ、バカっ! アブねーだろっ!」 思わず隠れようとするおれに、 「心配するな、安全だ」 (ミツル)は澄ました顔でほざいた。 「飛鳥(アスカ)マークⅡはいわゆる『サイボーグ・ポリス』というやつでな。最新鋭の装備を有し、その判断は常に冷静。感情に左右されない点では人間など及ぶべくもないぞ」 ——史上最高の警官だ。 ……ほーん、そりゃー大したこった。 そんなに太鼓判を押されては、 むしろ疑ってみたくなるのがヒネクレ大人たちというもの。 おれの意見に同調し、千夜もうさんくさげに言った。 「なんだかあやしい話だわ。『史上最高の警官』が、『史上最低のヒーロー』と組む? ……『支給金』を使い込むような」 (おいおい、おめーもしつけーな……) 対照的にベルというと、すでに憧れキラキラだった。 「ほ、ほへー、かっこいいですわ……!」 それに気づいた飛鳥マークⅡは、口元をほんのわずかにゆるめ、 「……ふふん♪」 (あれ? 気のせいか? 一瞬、誇らしげな顔したぞ?) だがすぐ元の表情に戻り、レーザー銃をしまった右手をおれの方に差しだしてきた。 「そういうことだ、シープマン。これからどうか、よろしく頼む」 「あ、ああ……よろしくな」 おれがその手を握ろうとした、 まさにちょうどその時だった。
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