1.ヒーローなんてしたくねぇ

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にわかに水面(みなも)が渦巻いて、 渦の中から飛び出た「なにか」が飛鳥の右手に絡みつき—— 「あっ」という間に力まかせに肘から下を引きちぎった! 「……っ、不覚(ふかく)!」 「テメェ! この野郎っ!」 故障箇所から火花を上げて、のけぞる飛鳥(アスカ)をかばっておれは、 再び出てきたその長いやつを力いっぱいとっ捕まえた。 「オラァ! さっさと出こいやっ!」 勢いつけて引っぱれば、辺り一面、水しぶき。 海から出てきた敵の体は空中で丸い弧を描き、 ふ頭の硬いコンクリートに「ビシャリ!」と叩きつけられた。 「ギャッ!」とひと声、 (まだ許さねえ!) 「くらえ、手刀! 『シープマン・チョップ』!」 腕の一本、いただきだっ! 切り離されてビクビク動く、 太くて長くてヌルヌルしたのを地面にポイと投げ捨てて、 おれは相手に向き合った。 「きやがれ……この、『タコ野郎』!」
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