9.

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 黒岩の両手に頬を包み込まれ顔を上向かされた。顔が近づいてきて、キスされるのだと目を閉じたら唇から少し外れたところに柔らかい感触が押し当たった。あれ、と思って目を開けると黒岩にじっと口元を見つめられていて、口元のホクロにキスされたのだと気づいた。  もう一度顔が近づいてきて、今度こそ唇にキスが落ちてきた。柔らかい感触に陶然となっていると、角度を変えてまた唇が重なってくる。  舌も入れない唇を合わせるだけのキスに、震えるほど感動した。昔から大好きだったひとこうしてキスを交わしている。黒岩も何度も充の顔を見つめてはキスを繰り返した。瞼に、鼻先に、ホクロに、唇に、キスの雨が降ってくる。 大きな掌に頭を支えられ、よりいっそう深く口づけられた。大きく口を開かされ、舌が侵入してくる。黒岩の手に包まれると自分の頭がひどく小さなものに思えて、これから黒岩に食べられてしまうんだとゾクゾクした。    ふわりと身体が浮く感覚がして、気づけばベッドに押し倒されていた。Tシャツの下に忍び込んだ大きな掌が、胸を一撫でし、すでに立ち上がっている小さな乳首をすかさず捕らえた。むず痒い刺激にはっと目が覚める。 「ちょっと、待って」  ここに来るまで相当走ってだいぶ汗をかいてしまった。汗ばんだ体に触れられるのが恥ずかしくて、充はあわててTシャツの上から黒岩の手を握り込んだ。大胆に動きまわっていた黒岩の手が止まり、鼻先が触れあいそうな距離で顔を覗き込まれる。 「待てない」  充の顔に恐怖や嫌悪感がないことを確かめると、するりと充の手から逃れ、すでに尖っている乳首をさらに捏ねられた。黒岩の情欲に満ちた声にすっかり腰が砕ける。充は観念して身体の力を抜いた。夢にリンクしたときから薄々感じてはいたが、黒岩は見た目に反してかなりいやらしい。  普段とのギャップと止まらない愛撫による刺激で、なんだか頭の芯がくらくらとしてくる。
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