隣の殺人犯

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 隣のおじさんとおばさんとは、何となく仲良くしていた。  うちでパーティがあると、隣のおじさんとおばさんにもお裾分けしてあげたし、元旦にはおじさんやおばさんからお年玉も貰っていた。  おばさんはお喋り好きだったから、お互いの家の窓越しに話すなんて事も度々あった。  そんなおばさんが、いつしか認知症を患うようになった。  最初はそんな事はなかったのだが、次第におじさんも耐えられなくなったのだろう、二人の喧嘩がうちにまで響いてくる事が多くなった。  喧嘩の内容は、聞いている限り、どうでも良い事だった。窓を開けるな、みたいな。おじさんに怒鳴られる度に、おばさんの悲鳴のようなものも聞こえて来ていた。それはそれは凄まじかった。  おばさんが向かいにあった老人ホームに通うようになった頃には、こんな事もあった。おばさんが家の鍵を失くしたらしく、家に入る事が出来なかったらしい。おじさんはそれを責め、隣の玄関先では怒鳴り声と悲鳴が入り混じっていた。結果、鍵はおばさんの鞄に入っていたらしい。入れた場所の事を覚えていなかったのだ。それも相まって、おじさんの怒声は暫く止まなかった。  そんな事が何か月も続いたのだが、ある時から突然、その怒鳴り声がぴたりと止んだのだ。それに気付いたのは、うちの家族も少し経ってからだった。 「最近、隣、静かだね」  うちでもあまり触れないようにしていたのに、思わずそう口にしてしまう程、隣は不気味に静かだったのだ。  それから数日後の事。  隣の家の玄関先で、警察が現場検証をしているのを目撃してしまった。  初めてそんなものを見て驚いた。本当に警察の人ってドラマのように、あの綿みたいなのが付いた棒でぽんぽんやっているんだと思った。  そして、あぁ、とうとうか、とも思ってしまった。いつかこんな日が来ると、何となくそんな気はしていたが。  ところが次の日、母が伝えた事は、私たちを驚愕させた。 「あれ、おじさんが死んじゃったんだって」
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