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強健で意志のはっきりとした姫だと、周囲からも世間からも噂されているが、本当のところでは、紫苑にとってこの手の身に迫る危険は最大の恐怖であった。
これまで何度もこうした伝達はあったが、一度たりとも実際に身に危険が迫ったことはない。
取るに足らない小さい出来事まで伝達してくるために、通常であれば飽き飽きするはずであるが、紫苑は気の強い女性の装いとは裏腹に、毎度心の内では震えていた。
できることであればあの寿々も一緒に寝床へ入ってはくれまいか。そうも考えるほど身に迫る危険は人一倍に嫌っていた。
今晩は蝋燭の火をつけたまま眠りにつこう。そう思いたち、閉じた詩集の隣に置かれた、消えそうな蝋燭台を慎重に持ち上げた。
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