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さっきからあいつの視線が気になって仕方がない。
琴音は授業に集中しようともう一度黒板に視線を戻して、ひたすらに板書を取る。
「戦国時代は有名な武将がたくさん出てくるから、しっかり整理しておくこと。年号だけ覚えてもダメだぞー。なぜそれが起きたのか、流れが自分で説明できるように、いいな。」
歴史担当の教師が黒板の両端を大股で行き来しながら言う。
「じゃあ試しに、おい、大倉。関ヶ原の戦いはなぜ起きた。」
「え、あ、えっと。すんません、もう一回お願いします。」
指名された大倉誠はやはり授業は上の空で聞いていたらしい。教師に当てられたために私への視線が途切れて安堵したのもつかの間だった。
「しっかり聞いておけ。」
そう冷たく言い放つと
「石橋。関ヶ原の戦いはなぜ起きた。」
教師が今度は琴音を指名したのである。
「えっと。」
今度こそ答えなければこの教師を一気に不機嫌にさせてしまう。
必死に琴音は自宅で復習してまとめたノートを振り返る。
「えっと、秀吉が亡くなった後に、徳川家康と石田三成が権力争いをしたから、ですか。」
「ですか、じゃなくてもっと自信をもって答えろ。大倉、今の説明、聞いてたか。」
「あ、はい。」
大倉のとぼけた声に周囲が失笑している。
琴音はやっと安堵して時計を確認した。
長い授業ももう少しでチャイムが鳴るところである。
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