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タクシーの窓から見える景色が次第に馴染みのあるものに変わっていく。
4月も半ば。
外は春麗らかな天候に、季節の移り変わりのせいか、先日より少し日差しが強くなった。
窓から差し込む光はお肌の敵だと認識した私は少し窓際から離れてサングラスを持ち上げた。
ーーーー悩みの種だった弟の凌が結婚した。(二度目)
「お客さん、そろそろ目的地ですが、このあたりですか?」
「ええ。そこの角で降ろしてください」
家族間で凌の結婚について、暗黙の了解のように触れてはいけない話題だった。
十年以上前に婚約を破談にした後、本人は結婚する気配も恋人がいる兆しも見せなかった。
姉の私から見ても弟はその家に馴染めない、とわかっていたし、その当時の彼女をそこまで気に入る理由がわからなかった。凌の選択として間違ってはなかったと思う。
それから約十年の月日が流れ、最初の嫁は父の友人の娘だった。
それなら安心か、と思ったけど会った瞬間になんとなくわかった。
胡散臭い。
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