数字男

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 大学入学と同時に、スマホを買ってもらった。  先月発売開始したばかりの、超薄型の超最新型スマートフォン。  高校の時、折り畳み式の薄汚れたガラケーを持つ俺をバカにしていた、キムラやスズキの顔を思い出す。  羨ましいだろ、と思う。  だが、それ以上に、心の深いところでほっとする。 これでようやく、置いてきぼりだった自分が、時代に追い付いたような気がする。スマホを持つことは、一種のステータスでもあるのだ。無理に親に頼み込んで、本当に良かった。  スマホのホーム画面には、初めからいくつかのアプリがダウンロードされてある。  Google検索や、Twitter、Facebookなどの、俺でも知っている人気アプリだ。  白い鳥のマークのアイコンをタップする。これが噂のツイッターか。  高校のクラスメートにも、「アイドルの誰それがツイッターで~」と盛り上がってる連中がいた。アイドルをフォローすることで、自分が彼女の身近な存在になれたと錯覚するんだろう。  物は試しだ。  アカウント登録を済ませながら、それでも俺がこれにハマることはないだろうな、と思う。  ツイ廃とかいうアホらしい言葉を聞いたこともあるが、所詮そういう奴らは暇なんだ。自己管理がなってないんだ。  アカウント名は、「ショウ」。本名が田中彰太だから、適当に決めた。アイコンは、面倒くさいから初期設定の卵の画像のまま。  スマホを右手に持ったまま、ごろりとベッドの上に寝転ぶ。  遂にスマホを手にしたんだ、という喜びが、じわじわと胸に広がった。
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