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夏休みを二週間後に控えた日の授業で、教授が補習に該当する学生の名前を読み上げた。
例の、風景画の授業だった。
「田中くん」
覚悟はしていた。が、自分の名前が呼ばれた途端、どくん、と心臓がのたうった。
隣の席で、心配顔の永山が、こちらを見ているのが、視界の隅に映る。俺は永山を絶対に見ないように気を付けながら、机の上で組んだ両手を見つめていた。
「そして、優秀作は永山くんの作品です」
教授の言葉に、え、と目を見開いた。
思わず永山に顔を向ける。
その顔は、驚きと喜びで輝いていた。信じられない、とばかりに目を見張っている。
「ありがとう、ございます……!」
教授が、めったに見せない微笑みを永山に向けている。
周りの学生たちも、凄いね、と囁きあっている。
教授が、永山の作品を黒板に貼り出す。
あの、神社の絵だった。
『よくそんな幼稚なイラスト人前に晒せるなwww』
帰宅してすぐ、パソコンのアドレスを使って、裏アカを作った。
『肩外れてんぞww骨格から練習し直せ』
『ながやん』が投稿した、魔女コレのアニメイラスト。
そのひとつひとつに、リプライをつけていく。
『小学生かよ?ってレベル』
『草しか生えない』
その裏で、俺の本アカは、今日もいいねのオンパレードだ。
俺は、永山よりも勝っている。
すがりつくような気持ちで、俺はリプライを送り続ける。
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