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徹夜して描いたイラストを、ツイートする。そして、通知が来るまで待ち続ける。
何度も何度も、ツイートアクティビティを確認する。誰かが画像は開いているのに、いいねが来ない。リツイートされない。
イライラしながら、通知を手動で更新する。
ぐるぐるぐるぐる。読み込み中。
『いいね 3』
「リツイートしろよ!」
声に出して叫ぶ。
リツイートされなきゃ、いいねも増えない。そんなこと、どんなバカだって分かるだろ。早く、リツイートしろよ。
スマホが震える。リプライが来た。
『何だか最近、お疲れですか?無理せず休まれた方が良いですよ。で、また魔女コレ語りましょう!』
「どういう意味だよ!」
スマホを床に叩きつけた。
それは、俺のイラストが下手だってことか。雑になったと言いたいのか。
裏アカを起動し、そいつに悪口を送りつける。調子に乗んな、下手くそが。
突然、電話の着信音が鳴った。
表示されているのは、教授の名前。補習課題の締め切りが明日までだったと、ようやく思い出す。
その瞬間、火花が弾けるように、ひとつのアイディアが閃いた。
課題を持って教授の部屋を訪れると、やはりドアは半開きのまま、しんと静まり返っていた。
この教授は、無用心にも、いつもドアを開けっ放しのまま出掛けてしまうのだ。
恐る恐る、部屋の中へ足を踏み入れる。
古びた本棚には、ずらりと美術書が並んでいる。インクの臭いがむっと籠っていた。
整理整頓された、デスクの上の書類。そこにーー、
「あった」
予想通りだ。
永山の、神社の絵。教授が優秀作に選んだ一枚。
俺はポケットから素早くスマホを取り出した。
カメラを起動し、耳をそば立てる。
心臓の鼓動がうるさい。今にも口から飛び出しそうだ。気分が悪い。吐き気がする。
落ち着け。大丈夫だ。誰もいない。
画面をタップする。
――カシャリ。
シャッター音が、やけに大きく聞こえた。画像がぶれて、もう一度撮り直す。スマホを取り落としそうなほど、手がぶるぶると震えていた。
そして俺は画像を確認すると、大急ぎで部屋を後にし、弾む呼吸を整えながら、廊下で教授の帰りを待った。
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