数字男

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『アイリちゃんめっちゃカワイイですね!ファンになりました。フォローさせて頂きます☆』  初めて俺にリプライをくれた、初めて俺をフォローしてくれた、顔も名前も知らない誰か。  アルバムフォルダの奥に埋もれた、スクリーンショットを探し出す。  IDを、検索する。 『あなたをフォローしています』 「……ごめん」  両手で顔を覆う。  忘れていた。  フォロワーの数よりも、リツイートの数よりも、いいねの数よりも、たったこれだけのこの言葉が、どんなに嬉しかったのかを。この言葉に、どんなに勇気づけられたのかを。  真剣な眼差しで、神社をスケッチしていた永山の表情を思い出す。 『そのアカウント、僕の別アカです』  その文字を、指先でなぞる。  力任せに床に叩きつけたせいで、スマホの画面には斜めのひび割れが走っている。  アドレス帳を開いた。 『発信しますか?』 『はい』 「もしもし、永山――」  誰かに認められたい。特別な存在になりたい。その思いは、変わらない。  でも、それ以上に、俺は今――、 「ごめん。ありがとう」  人を、認められるようになりたいと、心から思った。
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