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episode262 急変
僕はこう言ったはずだった。
僕という男は
僕の知っている愛は
あなたが思っている以上に穢れていたからもう終わりにしましょうと——。
彼はしばし呆然として
その美しい眉一つ動かさず話を聞いていた。
「今後はあなたが天宮家のすべてを切り盛りして下さればいい——あなたにならみんな任せられます。すべて上手くいくよ」
今回に限ってどうして自分がこんなに思い切ったことを言い出したのか。
正直自分でもよく分からなかった。
「君はどうするの?君は——」
「僕は——僕はあの男を閉じ込めます。拘留を解かれたら地獄の果てまで引きずって、もう決してこの家の当主の席に座らせたりしない」
ただいつもより全てが
ひどく穢れていると感じていた。
「それは僕にしか出来ないことだから」
多分征司のせい。
これももしかしたらあの悪魔の思う壺なのか――。
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