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それ以上反対したって無駄だ。
誰もがそう思ったのだろう。
僕はバカなだけでなく誰より頑固だから。
薫が煙草を手にしたまま部屋を出て行く。
それに倣って空になったティーカップを中川に押し付け貴恵も後に続いた。
仕方なく——中川も僕と九条さんを横目に
貴恵から渡されたカップを下げに行く。
ずっと目を合わせていたから。
立ち眩みのような感覚。
僕は彼の正しさから——悲しみから
そして絶望感から逃げ出したかった。
「ごめん——」
言って真横をすり抜ける。
自分がしていることに
発熱する前のような悪寒さえ走る。
さすがにもう追ってはこないだろう——。
振り向くこともせず足早に廊下を行き
螺旋階段に差し掛かった時だった。
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