episode262 急変

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それ以上反対したって無駄だ。 誰もがそう思ったのだろう。 僕はバカなだけでなく誰より頑固だから。 薫が煙草を手にしたまま部屋を出て行く。 それに倣って空になったティーカップを中川に押し付け貴恵も後に続いた。 仕方なく——中川も僕と九条さんを横目に 貴恵から渡されたカップを下げに行く。 ずっと目を合わせていたから。 立ち眩みのような感覚。 僕は彼の正しさから——悲しみから そして絶望感から逃げ出したかった。 「ごめん——」 言って真横をすり抜ける。 自分がしていることに 発熱する前のような悪寒さえ走る。 さすがにもう追ってはこないだろう——。 振り向くこともせず足早に廊下を行き 螺旋階段に差し掛かった時だった。
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