51人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日——。
目覚めた瞬間にやられたと悟った。
「2時半ってなんだよっ……!」
朝一で病院にいるはずだった。
しかし枕元の時計の針は思いもしない時間を指していて。
隣に九条敬の姿はなかった。
サイドテーブルには昨晩僕らが1杯ずつ飲み交わしたグラス。
何を飲んだ——?頭がぼんやりして思い出せないのは。
僕が間抜けな道化だからじゃないさ。
美しい嘘つきにすっかり騙されたからだ——。
僕はベッドから飛び起きる。
まだフラフラしたまま服を身に着ける。
冷たい水で顔を洗うと九条さんの部屋を飛び出して——。
大声で中川を呼びつけた。
「中川!九条さんはどこ?」
目の前に立つ老執事の固い表情を見て。
こいつもグルだとすぐ分かった——。
「病院だね?」
「和樹坊ちゃま……」
「車を出せ!今すぐ病院に向かう」
玄関で花瓶を投げ倒し僕は感情のまま怒鳴った。
何本もの白薔薇が床に散らばる。
「クソ……!」
九条敬——何を考えてる?
最初のコメントを投稿しよう!