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見ると、カーテンを急に閉めたせいで、風鈴がカーテンレールから落ちて、バラバラに砕け散っていた。もはや原形をとどめていない。
あ、おばあちゃんの風鈴……。
私は、砕けたガラスの破片を手で拾った。すると、破片が指に刺さって、血がにじみでた。
「おい、なんだよ今の音」
兄の晴夏が私の部屋へと入ってくる足音と声が聞こえた。そして、私の姿を見るやいなや、
「お前何してんだよ!」
とがしっと片手で私の肩を掴んだ。
「怪我してんじゃねえか!なんでガラスを素手で触ったりしたんだ」
「お兄ちゃん……」
そしたら、何故か涙がこぼれてきた。
「なんだ、風鈴壊しちまって悲しいのか」
「……違う」
私は手に持っていた破片を床に落とした。破片は、さらに粉々に砕け散った。
「私も、こんなふうにあっけなく壊れることができたらいいのにって思ったの」
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