第4話 裸でパニック

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第4話 裸でパニック

晩ご飯事件の後に、各々お風呂に入った。 お風呂はすげーデカかった。 デカかったから潜ったりして遊んだのはここだけの話。 ポカポカの体が少し冷えてきた頃。 「さて、そろそろ寝るか」 ご主人様はパソコンを閉じて立ち上がった。 「あの、僕はどこで寝ればいいですか?」 「あぁ、お前はそこのソファで寝てくれ」 「わかりました」 ソファで寝るというと肩が凝って腰が痛くなるイメージだけど、ご主人様のソファは結構高級そうでフカフカしている。 だから、ここで寝る分には何も不満はない。 「明日は六時半に起こしてくれ」 「え、あの勝手に入っていいんですか?」 「入らないと起こせないだろ、頼んだぞ」 「は、はい!おやすみなさい!」 僕はスマホのアラームを六時から五分刻みでかける。 絶対に起きる!絶対に起きる! そう自分に言い聞かせて長い一日から眠りについた。 ――翌日 六時のアラームで起きた。 恐怖と不安であまり寝られなかったからか、二度寝しようとは思わなかった。 とりあえずのんびりと六時半まで過ごすことにした。 改めて部屋の中を見渡す。 リビングは十畳以上はあるか? 一人暮らしにしてはかなり広い。 もしかしたら恋人と一緒に住んでいたのかな? ちょっとリビングを探検してみる。 デカいテレビにデカいテーブルにデカいソファ、デカい観葉植物にデカい間接照明。 それ以外は特に何もない。 綺麗にしてるといえば綺麗にしてるが、殺風景と言ってしまえばそれまでだ。 そんな事を考えてると、あっという間に時間だ。 朝の三十分はとてつもなく短く感じる。 リビングから廊下に出てご主人様の部屋へと向かう。 しかしここで問題発生だ。 最初に逃げ出そうとしたときには気づかなかったが、リビングの他に部屋が二つある。 一つはご主人様の寝室、だとしたらもう一つは 何の部屋だろう…… やっぱりヤバめなものがあるんだろうか…… ここの二分の一をどう引くかによって僕の人生は変わりそうな気がする。 コンコン。 ドアをノックする。 「失礼しまーす……」 開いた部屋の中にはご主人様が………… 寝ていた! 良かった! もう一つの部屋が気になっていた反面、とんでもない事実が隠されていたとしたらとてもじゃないが、まだ受け入れる覚悟はなかった。 ベッドもデカい……ダブルサイズか? ご主人様がスヤスヤと寝ている。 普段はあんな態度のご主人様も寝ている時は可愛い寝顔をしているんだなぁ…… って、おい! なんで男の人なんか可愛いって思ってるんだよ! 今は起こしに来ただけだ!早く起こそう。 「ご主人様!起きてくださーい!」 ご主人様の体を揺する。 「……ん、ありがとう。リビングに戻ってていいぞ」 ご主人様は寝起きでもこの設定を忘れていなかった。 やっぱり本能でそういう人なのだろうか……? リビングのソファでしばらく座っていると、ご主人様が入ってきた。 ご主人様はもうスーツに着替えていて、仕事に行く準備が出来ていた。 「俺はもう仕事行くから、洗濯と掃除……あと十八時ごろ帰るからそれまでに晩ご飯作っておけよ」 そうだ!フライパンとかないんだった! 早めにお願いしておかないと…… 「あ、あのご主人様!料理道具を買わせてもらえないですか……?」 「食費渡しただろ?それでなんとかしろ。あと、荷物が午前中に届くはずだからきちんと中身を確認して、ここに携帯の番号置いておくから知らせてくれ」 ご主人様は宅配便用のハンコと電話番号を書いた紙をテーブルの上に置いて、そそくさと仕事に向かっていった。 ダメだ…… 食費を取るか、料理道具を取るか…… はぁ………… とりあえず洗濯するか…… 洗面所へ向かい洗濯機の蓋を開ける。 洗濯機の中にはご主人様の服が入っていた。 そういえば自分の服も洗ってなかったなぁ…… これは一緒に洗っちゃっても良いものなのだろうか……? んー…… やっぱりやめとこう。 昨日のことから僕は少し学んだ、無理はしないと。 四十分ほど経ってご主人様の服が洗い終わった。 服をベランダに干して、自分の服を脱ぐ。 素っ裸になり洗濯を待つ。 こんなの絶対にご主人様に見られたら怒られるよな…… でも十八時までは帰らないだろうし、裸で解放感を味わおう! そう思った矢先…… ピンポーン! インターホンが鳴る。 え、ちょっと待って…… どうしようこの状況…… そうだ!居留守を使おう! ピンポーン、ピンポーン! インターホンは再び鳴る。 えー……誰だよ…… そこで思い出した。 ご主人様が家を出る前に、荷物が届くと言っていた事を……! これは受け取らなければまずいんじゃないか? 僕はひとまずインターホンに出る。 画面には明らかに配達員が映っているが、知らないフリをする。 「……はい?」 「すいませーん、宅配便ですー!」 「宅配便ですか!?はーい、ちょっと待っててくださーい」 さあ、これで相手にまさか宅配便が来るなんて知らなかったと印象づけることができた。 あとはこの素っ裸をどうするかだ…… リビングを駆け回るも、服らしきものはない。 という事は寝室に向かうしかないのか!? でももう迷ってる暇なんてない。 僕は急いで寝室へと向かった。 日が差している寝室はポカポカで気持ちよさそうだが、そんな事を言ってる暇はない。 クローゼットらしきもの発見!! 大胆に開ける!! 中身はやっぱり………… 洋服だあああ!! 適当に見繕って服を着る。 若干大きいが気にしない。 だって裸よりましだもん。 クローゼットを閉めようとした時、ふと目についた。 あれは……………………ムチ? そんな考えがよぎりながら閉めた。 しかしそんな事はどうでもいい! 早く受け取らねば!! 逃げ出そうとした時よりも早く玄関へと向かう。 ドドドという足音と共に玄関のドアを開けた。 あまりの勢いに配達員も驚いていたが、 「……こちら荷物になりまーす」 「はーい」 今まで押したどんなハンコよりも勢いよく押した。 配達員はドン引きしながら帰っていった。 ミッション成功だ、今日は最低限の仕事はした。 荷物を持ってリビングへと戻る。 興奮してたから分からなかったけど、この荷物すげー重たいな…… ご主人様なに頼んだんだろうか…… 確か中身を確認して連絡しろって言ってたよな…… 中身を確認させるという事は、きっとこんな物を買ったから覚悟しておけよって思わせるような物が入ってるんだ…… なんて恐ろしい人なんだと思いながら、荷物を開けてみる。 すると中から出てきたのは…… 包丁やまな板、フライパンなどの料理道具だった。 ………………?? つまり、こういうことか? ご主人様は僕のためにわざわざ選んで買ってくれたということか?? 嬉しい!嬉しすぎる!! 舞い上がり電話をする。 何回コールしたが分からないが、ご主人様が出る。 「はい、もしもし大塚です」 「ご主人様!届きましたよ!!」 「なんだお前か」 「心配して買ってくれたんですね〜!!」 「なんのことだ?」 「フライパンとか包丁とか!」 「……あぁ、間違えて買ったみたいだな」 「え、間違えた?」 「忙しいから切るぞ?じゃあな」 切れてしまった…… もしかしてこれは俗に言う”ツンデレ”じゃないか? ということは………… ご主人様は僕の事を少なくとも好意的に見てくれているという事だよね!! よーし!! 今日は美味しいご飯作って待っててやるぞー!! 僕は簡単に流されやすいのだろう。 今はただご主人様が喜んでくれればそれだけで嬉しいと思ってしまっている。 ご飯美味しく食べてくれるだろうか…… そんな事を考えながら僕は掃除をするのだった。
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