好きです好きです好きです

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好きです好きです好きです

 ツンデレで、本心を言わない人だとわかっていても、好きだと声にして欲しいのは、俺の我儘だってのもわかってるけど…  葛目さんの返事を待つ俺の頬に、冷たい何かがあたり、空を仰ぐ俺の前にいる葛目さんも、降ってきたなと空を見上げる。 「雨ですか?」 「いや、雪だ」  暗闇に白い粒がひらひらと降ってきた。  その粒を手で受け止めると、白く柔らかそうな物体は透明の雫となって消えていく。  また空を見上げれば、羽根のような物が一斉に降りてきて、頬に触れた羽根は冷たく、顔を下ろせばいいのに、葛目さんの顔をまともに見れなくて、降りてくる雪を見続けてる俺に葛目さんは感想を聞いてきた。 「どうだ?初めての雪の感想は?」 「……冷たいです。今日の葛目さんみたいで…」  葛目さんからの答えはない。  そのかわりに、指先まで冷えた手を葛目さんの手が包んでくれたが、その手を握り返すこともできず、口が勝手に心の声を洩らしていく。 「葛目さんが俺をどう想っていても、隣に寄り添っていれるならそれだけで良かったのに葛目さんが答えてくれるから…俺馬鹿だから勘違いしたじゃないですか」  辛い。  苦しい。  好きの言葉が重なっていくほど、その言葉を伝えるほど、葛目さんが遠くなって、まるでこの手に乗った雪のように、いつかはこの関係も自然と消えてしまうのかもしれない。  降り続く白い雪が、葛目さんと俺の間に見えない壁を作り、泣きそうな俺の顔もきっと葛目さんには見えないだろう。    握られていた温もりが次第に消えていく。  その手を捕まえることもできずにいた俺の頭に、衝撃が走り、巻いていたマフラーが掴まれ、そのまま力強く引き寄せられると、怒った顔の葛目さんと目が合う。  その距離、わずか数センチ。 「アホが!!!」 「く、葛目さん?」 「勝手にベラベラ喋りやがってわれにわしの何がわかる?好きに決まっちゅーやろうが!」  葛目さんの怒りが頂点に来たのか、お国言葉で叫んだ後、名前を呼ぼうとした口はあっさり塞がれ、すぐに離した葛目さんの耳まで赤い顔に、釣られた俺まで熱が上がる。  わかったかと念を押すように、俺の頭を力強く撫でた手に、胸の奥から熱いものが込み上げ、涙ぐみそうになる事を抑えようと、葛目さんの身体を抱き寄せ、葛目さんも葛目さんの心も逃さないよう腕の中に閉じ込めた。 「好きです、好きです、好きです、葛目さん」 「おう」 「愛してます」 「おう、次同じ事言ったら躾け直すからな」 「はい」  俺の背中に触れてきた感じたことのない温もりに堪えていたものが頬を伝い、抱きしめていた腕に力を込める。  まだ、この温もりを感じていたいから、お願いします。 少しだけ、もう少しだけ、 この冬空に舞う白い羽で 俺達を隠して下さい。 end
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